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腎臓とは?
体外に老廃物を排出して血液をきれいにします
腎臓には、血液を濾過して、体内の老廃物を尿として体外に排出する働きがあります。腰より上の背中側にあり、背骨を中心に左右に1つずつあります。体外の老廃物を排出して血液をきれいにするほか、体内の水分やミネラルの量を調整したり、赤血球を作るのに必要なホルモンを産生したりしています。
腎臓のよくある病気
尿路結石
尿路結石とは?
尿の中に含まれる物質が腎臓内で結晶をつくり、それが有機物質と結合してできたものです。石ができる部位により腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と名称がつけられています。ほとんどが腎結石、尿管結石で発見されます。原因は感染、代謝異常、内分泌系疾患、偏食などがありますが、原因不明な場合も多いとされています。
どんな症状があるのか?
結石の大きさや部位により違いますが、尿管などの狭いところに結石が詰まり尿の流れを阻害すると、背部、脇腹、下腹部に激しい痛みを伴い、冷感、吐き気を伴うことがあります。結石が下に移動してくると、膀胱炎のような症状や、男性では精巣、女性では外陰部にも痛みが出てくることがあります。血尿も多くみられますが、顕微鏡でしかわからない場合もあります。
尿路結石の検査は?
尿検査、血液検査、エコー検査、レントゲン検査などが行われます。特に確定診断にはCTが有用であるとされています。
尿路結石の治療は?
1cm以上の結石では、自然に出る可能性が低いため、積極的な治療が勧められています。1cm未満の結石では自然に出る(自然排石)可能性があるため水分負荷などで経過をみる場合がありますが、1ヶ月以上が経過しても結石が出ない場合は、腎機能障害や感染を避けるために積極的に治療をしたほうがいいと言われています。
外科的治療では、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)やTUL(経尿道的結石破砕術)などの、お腹を切らない手術が主流です。
再発を予防するには?
尿路結石は再発が多いことが報告されています。治療後も再発予防を心がけることが必要です。
- 食事以外に1日2000ml以上の水分を摂取することで尿が薄くなり結石ができにくくなることが報告されています。
- 尿路結石のほとんどはシュウ酸カルシウムなどカルシウムを主成分にしたものが多く、これまでカルシウムの制限が大切であるとされていましたが、カルシウム制限は骨粗しょう症などのリスクがあります。むしろカルシウム不足によりシュウ酸の尿中排出量が増えてかえって結石形成を促進することがわかってきました。つまりカルシウムは腸の中でシュウ酸と結合しシュウ酸カルシウムとなると腸から吸収されなくなり、シュウ酸の尿中排泄を抑制してくれるので結石ができにくくなるのです。
シュウ酸が多く含まれるものに紅茶やチョコレート、ホウレンソウなどがあり、ミルクティーにして飲む、チョコレートを食べながらミルクを飲む、ホウレンソウに鰹節をかけるなどはまさに理にかなった方法で生活の知恵に生かされています。またシュウ酸はおひたしにすると量が半減するので調理法の工夫も重要です。タケノコなどはおひたしにするといいでしょう。お茶にもシュウ酸が含まれているため飲みすぎには注意が必要です。 - 塩分を控えめに規則正しい食生活、これは全ての疾患予防にあてはまるかもしれません。寝る直前の食事も厳禁です。結石は夜作られると言われています。
- プリン体の取りすぎは尿酸値を高めることになり結石の再発を促進させる可能性が高いと言われています。ビールの飲みすぎには注意しましょう。
ビタミンCの摂取は結石再発を促進させるか?
尿中シュウ酸排泄量が増加することは報告されていますが、結石再発を促進させるという報告はありませんので毎日大量にビタミンCを摂取しない限りは問題ないと考えられます。
腎盂腎炎
腎盂腎炎とは?
腎盂腎炎とは、腎臓内で尿がたまる「腎盂(じんう)」という臓器で炎症が起こる病気です。通常は片側の腎臓で、急性単純性腎盂腎炎は女性に発症することが圧倒的に多い疾患です。腎盂腎炎は「単純性腎盂腎炎」と「複雑性腎盂腎炎」に分けられます。
単純性腎盂腎炎と複雑性腎盂腎炎の違いは?
<単純性腎盂腎炎>
糖尿病、尿路結石などの基礎疾患のない方に発症し急性の経過をとる腎盂腎炎で急性単純性腎盂腎炎あるいは急性腎盂腎炎と言われています。大腸菌などの細菌感染によって起こります。軽症例では外来治療が可能ですが、重症例では入院治療が必要になることがあります。
<複雑性腎盂腎炎>
糖尿病、尿路結石などの基礎疾患のある方に起こる腎盂腎炎です。慢性時には、必ずしも治療が必要ないのですが、急性増悪時には急性単純性腎盂腎炎と同様の症状が出現し治療を要します。また複雑性腎盂腎炎の急性期には敗血症といって細菌が腎臓から血流に乗り全身へ広がる重篤な病気に移行しやすく注意が必要です。尿の流れが停滞している場合はドレナージといって腎盂内に貯留した膿尿を外科的に体外へ出す処置が必要になります。
どんな症状があるのか?
急性単純性腎盂炎の症状
- 高い熱が出る(38℃以上)
- 悪寒がする
- 吐き気・嘔吐がある
- 背中や腰が痛い
- 尿が濁る
など
複雑性腎盂腎炎の症状
通常は症状がありませんが、急性増悪期には急性単純性腎盂腎炎と同様の症状が出ます。
腎盂腎炎の原因は?
腎盂腎炎は、細菌に感染することで起こります。主な原因菌は大腸菌ですが、それ以外にも、緑膿菌(りょくのうきん)、腸球菌、ブドウ球菌などが原因で起こることもあります。前立腺肥大症、尿路結石などの疾患があると尿流が悪くなり、細菌感染のリスクが高まります。
腎盂腎炎の検査は?
膀胱炎の検査とほぼ同様です。
腎盂腎炎の治療は?
腎盂腎炎の治療は、膀胱炎の治療と同様、抗菌薬の投与が中心です。単純性腎盂腎炎は耐性菌が少なく経口薬による治療も可能ですが、症状悪化時には入院の上、抗菌薬の点滴が必要となります。複雑性腎盂腎炎の慢性時は必ずしも治療が必要ではありませんが、急性増悪時には急性腎盂腎炎と同様の症状が出現し治療が必要です。尿の流れが停滞している場合は積極的にドレナージ(腎盂内に貯留した膿尿を外科的に体外へ出す処置)をする必要があります。
糸球体腎炎
糸球体腎炎とは?
腎臓は血液の老廃物を尿として体外に排出する働きがあります。糸球体とは血液をろ過して尿を作るところです。この糸球体に炎症が起こるのが糸球体腎炎です。
どんな症状があるのか?
急性糸球体腎炎の症状
急性糸球体腎炎は感染を契機に発症する一過性の腎炎です。
- 扁桃腺が腫れている
- 喉が痛いなどの風邪症状
- 体がむくむ
- 血圧が高い(高血圧)
- 血尿が出る
など
慢性糸球体腎炎の症状
慢性糸球体腎炎は特に症状がないことが多いのが特徴です。健康診断で血尿、たんぱく尿が指摘されて初めてわかることがあります。
自覚症状がなく、血尿、たんぱく尿、高血圧を認め、徐々に腎機能が悪化していくことがあります。代表的な疾患としてIgA腎症があります。
ネフローゼ症候群の症状
糸球体腎炎の中で、たんぱく尿が高度の場合をネフローゼ症候群といいます。症状は手足のむくみ、体重増加、だるさなどがあります。
急速進行性糸球体腎炎の症状
糸球体腎炎の中でもっとも重篤な経過をたどる腎炎です。腎機能が数週~数ヶ月で悪化し腎不全に至ってしまうため絶対に放置してはいけません。血尿、尿量が少ない、むくみをきたすことがありますが、体がだるいだけのこともありますから注意が必要です。
糸球体腎炎の原因は?
急性糸球体腎炎はほとんどの場合、溶連菌(ようれんきん)に感染することで起こります。慢性糸球体腎炎の原因ははっきりわかっておらず、なんらかの免疫反応の異常により生じる可能性が考えられています。
糸球体腎炎の検査は?
尿検査
検尿を行って、血尿やたんぱく尿がないかをチェックします。
血液検査
採血を行って、免疫異常がないか確認したり、腎臓の機能をチェックしたりします。
超音波検査(エコー検査)
腹部エコーで腎のサイズ、のう胞の有無、水腎症(尿流が妨げられて腎盂(う)などが拡張した状態)の有無などを確認します。
腎生検
糸球体腎炎の確定診断に必要な検査です。針で腎臓の組織を採取して、糸球体を顕微鏡で観察し診断します。短期間の入院が必要です。
糸球体腎炎の治療は?
糸球体腎炎の種類により治療法は異なりますが、原則として塩分摂取を控え、過労を避けることが大切です。軽症の場合、薬物療法を行わないこともありますが、高血圧があれば降圧剤を服用し、また必要なケースではステロイド薬や免疫抑制剤を使用する場合もあります。
腎がん
腎がんとは?
腎がんは腎実質にできるがんで、同じ腎臓にできたがんでも、腎臓の中にある腎盂(う)にできる腎盂(う)がんとは区別されます。一般に腎臓がんとはこの腎実質にできる腎がん(腎細胞がん)のことをいいます。男性にやや多く発症し近年増加傾向にあるがんです。
どんな症状があるのか?
昔から言われる痛み、腹部腫瘤(お腹のシコリ)、肉眼的血尿は画像検査が十分できなかった時代のことで、今では進行しないとこれらの症状で見つかることは稀です。検診や他の病気のためにエコーやCTを行い、偶然見つかることが多いとされています。
腎がんの原因は?
腎がんのリスクファクターとして、肥満、喫煙、高血圧があります。遺伝子が原因で発生するフォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau:VHL)病は若い世代で腎がんが発症すると言われています。また透析患者では健常人と比較して腎がんの発生頻度が高いことが報告されています。
腎がんの検査は?
血液検査
腎機能、肝機能など体の状態を把握するために行います。ただし前立腺がんにおけるPSAのように腎がんに対して信頼できる腫瘍マーカーは現在のところありません。
超音波検査(エコー検査)
腎がんの早期発見には腹部エコー検査が推奨されています。しかし良性腫瘍との鑑別には不十分でありCTやMRIが追加されます。ただしパワードップラー、カラードップラーといった血流をみる機能のある超音波検査装置では検査精度が高まると言われています。
その他の検査
腎がんであることを確定するにはCT検査が優れています。エコーで腎がんが疑われた場合、次に腹部CT検査をすることが推奨されています。また腎がんは肺へ転移することが多く、胸部CTを行うこともあります。MRIはCT検査に用いる造影剤に対してアレルギーのある場合やエコーやCTで診断が難しい場合、さらにレントゲンによる被爆を避けたい場合に行います。
腎がんの治療は?
腎がんの治療は手術(外科的治療)が第一選択となります。一般的にがんの大きさが7cm以下の場合は小さな穴から器械を入れて手術する腹腔鏡下手術を行うことが多く、それ以上の大きながんでは開腹手術になることが多いとされています。これらはがんの発生した側の腎臓を全部摘出することになります。腎臓は2個あるので1個残れば大丈夫とされていますが、4cm以下の腎がんでは腎臓を全部とらず、がんだけを切除する腎部分切除術も最近では多く行われています。このほうが、腎臓が2個残るので腎機能のことを考えると安心できるからです。また腎部分切除術も腹腔鏡下や手術用ロボット(ダヴィンチ)を遠隔操作して行う方法が保険収載されたことより主要な病院で行われるようになりました。開腹手術に比較して傷が小さいのが特徴です。
薬物療法
詳細は割愛しますが主に進行したがんに対して治療します。インターフェロンなどの以前から行われている免疫療法、この免疫療法に代わり標準的治療薬になったスニチニブなどの分子標的薬、ノーベル賞を受賞された本庶佑先生が開発に関わっているニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬があります。