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前立腺とは?
男性特有の臓器で前立腺液(精液の主成分)を作ります
前立腺とは男性特有の臓器で、膀胱の下に尿道を取り囲むようにあります。その大きさ・形は栗の実によく似ていて、働きについてはまだ不明な部分も多いのですが、精液の主成分の1つである前立腺液を作り、分泌する働きがあることがわかっています。
前立腺のよくある病気
前立腺肥大症
前立腺肥大症とは?
前立腺肥大症とは、前立腺が加齢とともに大きくなったり交感神経が活性化されたりして尿道を圧迫し、残尿感、頻尿、尿失禁などの様々な排尿障害を引き起こす病気です。日本人の55歳以上の男性の5人に1人が、前立腺肥大症の症状で悩まされているとされています。通常、60歳以上の男性によくみられ、年齢を重ねるとともに「おしっこ(尿)が出にくい」「おしっこ(尿)をしてもスッキリしない(残尿感)」「おしっこ(尿)に勢いがない」などの症状が現れるようになります。
どんな症状があるのか?
- おしっこ(尿)が出にくい
- おしっこ(尿)をしてもスッキリしない(残尿感)
- おしっこ(尿)に勢いがない
- すぐにトイレに行きたくなる
- おしっこ(尿)が我慢できないことがある
- おしっこ(尿)を漏らしてしまう(尿漏れ)
- 夜、何度もトイレに行きたくなる
- 力を込めないとおしっこ(尿)が出せない
など
このような症状をお感じの時には、お気軽に西区北堀江の四ツ橋腎泌尿器科こじまクリニックまでご相談ください。
症状が進行すると?
前立腺肥大症が進行すると、上記の症状以外にも、「おしっこが出なくなる(尿閉)」「血尿が出る」「結石」「むくみ」「腎機能障害」などが起こる場合があります。普段のおしっこ(尿)で何か異変を感じた時には、そのままにせずにお早めに当クリニックを受診するようにしましょう。
前立腺肥大症の原因は?
前立腺肥大症の症状は、前立腺の肥大により尿道が圧迫されることで起こりますが、そもそも「なぜ前立腺が肥大するのか?」という原因についてははっきりとはわかっていません。男性ホルモンが関与しているのではないかと考えられています。
また、高血圧、高血糖、脂質異常などを有しているメタボリックシンドローム、いわゆるメタボの人は前立腺肥大症になりやすいと言われています。
前立腺肥大症の検査は?
問診
他の前立腺疾患と区別するために、現在お感じになられている症状を詳しくおうかがいして、「国際前立腺症状スコア(IPSS)」という基準を使って問診を行います。
国際前立腺症状スコア(IPSS)はアメリカ泌尿器科学会で提唱された症状質問票で合計点数が0~7点が軽症、8~19点が中等症、20~35点が重症と評価されます。
国際前立腺症状スコア(IPSS)
どれくらいの割合で次のような症状がありましたか | 全くない | 5回に1回の割合より少ない | 2回に1回の割合より少ない | 2回に1回の割合くらい | 2回に1回の割合より多い | ほとんどいつも |
---|---|---|---|---|---|---|
この1か月の間に、尿をしたあとにまだ尿が残っている感じがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿をしてから2時間以内にもう一度しなくてはならないことがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿をしている間に尿が何度もとぎれることがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿を我慢するのが難しいことがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿の勢いが弱いことがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この1か月の間に、尿をし始めるためにお腹に力をいれることがありましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
0回 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | |
---|---|---|---|---|---|---|
この1か月の間に、夜寝てから朝起きるまでに、ふつう何回尿をするために起きましたか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
IPSS 点
とても満足 | 満足 | ほぼ満足 | なんともいえない | やや不満 | いやだ | とてもいやだ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
現在の尿の状態がこのまま変わらずに続くとしたら、どう思いますか | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
QOLスコア 点
血液検査・尿検査
一般血液検査やPSA(前立腺特異抗原)などを調べて、腎機能障害や前立腺がんの疑いがないかチェックします。また、尿検査で、前立腺肥大症以外に泌尿器科疾患が隠れていないか確認します。
尿流量測定(ウロフローメトリー)
尿流量測定装置を使って、患者様の普段の尿の勢いや量を確認します。前立腺肥大症の診断、程度、他の疾患の有無などを確認するのに大切な検査となります。
当院では、TOTO社製の尿流量測定装置を導入しており、見た目は普通のトイレと変わらないため、いつも通り排尿していただけます。
超音波検査(エコー検査)
前立腺の状態を観察します。前立腺の大きさや形などが観察できるだけでなく、膀胱内にどのくらい尿が残っているかも確認できます。
前立腺肥大症の治療は?
前立腺肥大症の治療は、大きく「薬物療法」と「手術(外科的治療)」に分かれます。薬物療法でよく使用されるのは、活性化した交感神経に働きかけ前立腺を緩め、尿を出やすくするα1受容体遮断薬があります。また前立腺が大きいケースでは、男性ホルモンの働きを抑えて前立腺を縮小させる5α還元酵素阻害薬を使用することがあります。さらに2014年から保険適用となったPDE5阻害薬が、組織障害を改善し有効であると報告されています。これらの薬物療法で効果が期待できない場合は手術を検討します。手術はお腹を切らない内視鏡的手術が標準です。
60歳以上の約8割に何らかの排尿障害があると言われていますが、「恥ずかしい」、「年齢のせいだから仕方がない」などの理由から受診しない方が多いのが現状です。有効な治療はたくさんありますので、気になったら受診するようにしてください。しかしもっとも大切なのはメタボや生活習慣の改善です。運動などを行い、アルコールや塩分の摂取を控え、禁煙を心がけましょう。
前立腺炎
前立腺炎とは?
前立腺炎は、ほとんどの世代の男性でみられ、高齢者より若年者に多いとされています。アメリカの国立衛生研究所(NIH)によって、「急性細菌性前立腺炎」「慢性細菌性前立腺炎」「慢性前立腺炎・慢性骨盤痛症候群」「無症候性炎症性前立腺炎」の4つに分類されていますが、通常は大きく「急性前立腺炎」と「慢性前立腺炎」に分けられます。
急性前立腺炎と慢性前立腺炎の違いは?
<急性前立腺炎>
細菌が尿道から侵入し、前立腺に感染して炎症を起こします。体力が低下している時や、疲労が溜まっている時などに起こりやすく、また前立腺肥大症を伴っているケースも多いとされています。放置すると敗血症などの重篤な疾患に移行することも珍しくはありません。
<慢性前立腺炎>
成人以降の男性に多くみられ、陰部、会陰部、肛門周囲、時に大腿の痛み、不快感があり、排尿症状を伴うこともあります。細菌感染が原因のこともありますが、非感染性の慢性前立腺炎では原因がまだ特定できておらず、ストレスや血流障害が原因ではないかとされています。非感染性の場合は急性前立腺炎と異なり、敗血症になることはないのですが、治療法が確立されておらず、また症状が遷延することが問題とされています。
どんな症状があるのか?
急性前立腺炎の症状
- おしっこ(尿)をすると痛みがある(排尿時痛)
- おしっこ(尿)を出してもスッキリしない(残尿感)
- 何度もトイレに行きたくなる(頻尿)
- 尿が出にくい(排尿困難)
- 血尿が出る
- 38~40℃の高熱が出る
- 悪寒
など
慢性前立腺炎の症状
- 下腹部に痛み、違和感がある
- 陰部、会陰部、肛門周囲に痛み、違和感がある
- 大腿の痛み、不快感がある
- 長時間座ると症状が悪化する
- <おしっこ(尿)に関連した症状
など
前立腺炎の原因は?
急性前立腺炎の原因
細菌が尿道から侵入し、前立腺に感染して炎症を起こります。前立腺肥大症など排尿障害により尿勢が低下した例では細菌が侵入しやすく原因となることがあります。
慢性前立腺炎の原因
細菌感染の他、血流障害、中枢神経系の異常、心理的ストレスなど多くの原因が複雑に絡み合っていると考えられています。長時間のデスクワーク、疲労やストレスなどもリスクファクターとなります。
前立腺炎の検査は?
尿検査
検尿を行って、尿に白血球や細菌がないか確認します。
細菌検査
尿中の細菌学的検査(培養検査)、また高熱がある場合は、血液中の細菌学的検査を行う場合もあります。
その他の検査
必要に応じて、血液検査や超音波検査(エコー検査)などを行います。
前立腺炎の治療は?
急性前立腺炎、慢性前立腺炎ともに薬物療法が中心となります。急性前立腺炎の多くは、抗菌薬の投与で治療が可能です。慢性前立腺炎でも細菌感染が原因の場合は抗菌薬を投与することがあります。非感染性慢性前立腺炎の場合は、前立腺肥大症の治療に用いるα遮断薬、その他植物製剤、漢方薬などを併用して投与することがあります。しかし非感染性慢性前立腺炎は、劇的に症状を改善させる治療法がないのも事実です。この疾患を患者さんおよび医療側が理解することも必要です。
血精液症
血精液症とは?
血精液症とは、精液に血液が混じった状態をいいます。20~60代と幅広い年齢層で起こりますが、主に30~40代に多いといわれています。ほとんどの場合、前立腺や精のう(前立腺の後ろにある袋状の器官)の炎症が原因で精液に血が混じるようになります。
血精液症の原因は?
前立腺や精のうの炎症や、うっ血などの循環障害がほとんどですが、稀にがんの症状として現れることもあるので注意が必要です。また血液凝固異常や、血管がもろくて射精時のいきみが原因で微小な血管から出血することがあります。
血精液症の検査は?
血液検査
中高年以上の方では前立腺がんの有無を確認するためPSAという前立腺腫瘍マーカーの採血を行います。
尿検査
炎症が原因の場合、尿培養検査を行い原因となる菌を調べます。また性感染症が原因のことがあるのでクラミジアなどを検査することがあります。
画像検査
エコーで前立腺、精のうなどに異常がないかを調べます。また必要に応じてCTやMRIなどを追加することがあります。
血精液症の治療は?
炎症があると診断した場合は、抗生物質や抗炎症薬を投与します。特に問題ない場合は経過観察のみで治療をしない場合もあります。精のうに貯留した血液がしばらく排出されるため、完全に血液が消失するまで1~2ヶ月かかることがあります。性感染症が原因でなければ性行為に関しては問題ないとされています。
前立腺がん
前立腺がんとは?
前立腺がんとは、前立腺にできるがん(悪性腫瘍)のことです。多くの場合、進行がゆっくりですから早期に発見すれば治療可能ながんと言われています。しかし進行すると骨、リンパ節、肝臓、肺などに転移しますので治療が困難になります。以前は日本人には少ないがんと言われていましたが、生活様式の欧米化に伴い増加傾向であり、60歳以上の方で罹患率が高くなる傾向にあります。男性では胃がん、肺がん、大腸がんに次いで罹患率が高いがんです。
どんな症状があるのか?
前立腺がんは、初期にはほとんど症状が現れません。進行するにつれて、頻尿や排尿困難などの症状が現れ、背骨や骨盤に転移すると腰痛、歩行困難などが生じるようになります。
前立腺がんのリスクファクターは?
リスクを高める要因として、前立腺がんの家族歴、すなわち父親や兄弟が前立腺がんの方は危険性が高いと言われています。父や兄弟のうち1人が前立腺がんの場合、2倍の発症リスク、2人以上が前立腺がんの場合、5~11倍の発症リスクの増加があると言われています。
人種が同じでもアメリカ移住者では罹患率が高いことからライフスタイルと密接な関係があると指摘されています。肥満は強力なリスク因子であり、野菜や大豆製品を中心とした食事を心がけ、適度な運動を含めた活動的なライフスタイルを身につけることが大切です。また喫煙との関連性は指摘されていませんが、喫煙者は非喫煙者と比較して前立腺がんによる死亡リスクが高いと指摘されています。禁煙を心がけましょう。
前立腺がんの検査は?
PSA(前立腺特異抗原)を採血して高値であれば前立腺がんを疑います。しかし肥大や炎症でも高値となりますので、健診でPSAが高値と言われた方は泌尿器科専門医を受診してください。触診、エコー、MRIなどの検査を行い、前立腺がんの可能性が否定できない場合は、前立腺生検を行います。これは麻酔をしてエコーガイドに前立腺組織を10か所以上採取して組織内にがんがないかを検査する方法です。ただし1~2泊の入院が必要となります。
前立腺がんの治療は?
がんの進行や年齢、からだの状態などから手術、放射線治療、内分泌療法(ホルモン療法)、化学療法などを選択します。またがんがおとなしい性質のものでは経過観察などを行い、病状悪化の兆しがみられた時点で治療を行う監視療法という方法もあります。手術では手術用ロボット(ダヴィンチ)を遠隔操作して行う方法が保険収載されたことより主要な病院で行われるようになりました。開腹手術に比較して出血量が少なく、術後の回復が早いと言われています。
前立腺がん予防のための食品は?
- 大豆製品などのイソフラボン、またトマトに含まれるリコピンは予防効果があるとされています。
- コーヒーは多くのポリフェノールを含んでおり、コーヒーを1日3杯以上飲むことでがんのリスクが軽減したという報告があります。ただし覚醒作用があるため夕方以降はあまり飲まないようにしましょう。
- カレーなどに含まれるクルクミンは強力な抗酸化作用、抗炎症作用がありPSAが減少することが報告されており、予防効果が期待されています。
- ビタミンDも前立腺がんの抑制と予防に大きな影響を与えていることが報告されています。
前立腺がん予防のためのライフスタイルは?
- 適度な運動
- 禁煙
- 適切な食事による肥満の解消
これらは前立腺がんのみならず心臓疾患や糖尿病などの生活習慣病を防ぐ効果があり大切だと考えられます。